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2018年1月5日金曜日

飛行機は自動車より安全という大ウソ

新年早々お目出度い話題を書いてみる。

私は飛行機に4往復しか乗ったことがない。すべて国内線で3回は仕事で否応なく、残る1回も職場内の団体旅行である。パスポートなど取ったことも取るつもりもない。

理由は飛行機が怖いからだ。と思ってWEBで検索すると自動車よりも数百倍も安全だということを強調するサイトばかりだ。そこでは数字をあげて「証明」しているのだが、根拠薄弱な計算ばかりである。先日の炭水化物と死亡リスクの話と同じく、統計というのはどんな結論でも導けるのである。

「飛行機 死ぬ確率」で検索してトップに出るサイトによると、全世界で1年間に飛行機事故で死ぬ人は676人だそうだ。人口10万人当たりで言うと、1年間で飛行機事故で死ぬのは0.0097人、日本国内の自動車事故では3.2人ということで、自動車の方が300倍危険ということになる。

ここで極端な想像をする。全世界に飛行機は676人乗りが1機だけあって、その1機は必ず墜落して全員死亡しこれが毎年続くとする。こんな危険な乗り物はないわけだが、上の計算にあてはめれば極めて安全ということになる。

何がおかしいかというと「人口」との割合を考えるからだ。「乗る人数(および時間)」との割合を考えるべきだ。日本国内で走っている自動車は何百万台とあると思うが飛行機が何百万機も飛んでいるか? 1機あたり100人乗っているとしても何万機も飛んでいるか? 全世界でも5000機程度らしいが。

上記のサイトでは別の数字も出している。ジェット旅客機が事故を起こす確率は100万便あたり0.41回だそうだ。今度は自動車との比較はなく、毎週往復(年間104回)乗っても事故で死ぬ確率は3900年に1回という計算結果だけを示している。いかにも小さい確率のように思わせているが自動車の場合は計算しないのか? 片側だけ出して「ほら小さいでしょ」と言っても両方比較しなければ意味がない。

また3900年という数字の根拠も不明だ。1000000×0.41 = 104×3900 という計算なんだろうが左辺の掛け算は無意味だ。1000000 : 0.41 = 104×24000 : 1 の計算で24000年ではないのか。だからこれを使う。

私の主張にとっては6倍不利になるから文句ないだろう。週5回乗れば4800年に1回だ(※注1)。別の表現をすれば飛行機に週5回乗る人の、4800人のうち1人が1年間に事故で死ぬことになる。

では通勤や仕事で自動車に週5回乗る人の、4800人のうち1人が1年間に事故で死ぬだろうか。

日本の自動車事故死者数は年間4000人、免許保有者は8000万人、乗用車保有台数は6000万台、貨物車は1500万台(自動車検査登録情報協会)である。自動車に週5回乗る人が1000万人(※注2)いるとすると、2500人に1人が1年間に事故で死ぬことになる。死者の半分は歩行者側だから乗る人側では5000人に1人だ。


結局死亡事故という点では危険性はほとんど同じということになる。毎日乗らなければ確率は下がるがそれはお互い様だ。それでも自動車事故は多いと言われて納得してしまう理由は3つあると思う。

1)分母が多いため死亡確率は同じでも死者が数百倍になること。
2)飛行機は1回の事故で100人規模で死亡する。(1)と併せて考えれば飛行機事故1回と自動車事故数万回で同じ死亡確率になること。
3)自動車には物損や傷害の事故も多くあり日常的に事故の報に接していること。

1)の観点では日本で飛行機事故の死者数が年間10人であれば自動車事故と同じ死亡確率ということになるが、旅客機の事故なんか聞いたことがない(※注3)・・・1985年の事故では520人が亡くなっている。これは50年分だから2035年まで無事故でも飛行機の方が危険なのだ。

どこかの国では安全性を偽装するのがお家芸、テロ、なども考えれば・・・

それでも外国に行くには飛行機が必要だ。どうしても乗りたければ乗ればよい。自動車と同じくらい安全なのだから。ならば乗ろうか・・・やっぱり遠慮します。


(※注1)毎日乗っても8200年に1回と書いているサイトもあった。片道で計算しているのかもしれないが、往復だったとしても確率が半分に減る程度だ。また同じサイトでは、一生の間に自動車で事故死する確率は1/300と非常に大きいかのように書いているが、運転人生を40年とすれば12000年に1回ということだから飛行機と変わらない。書き方ひとつで「印象操作」できる良い例である。

(※注2)内閣府の世論調査の結果では、回答者の半分が毎日運転すると答えているので5000万人としてもよいくらいだ。

(※注3)個人の小型機や自衛隊機の事故は特殊なので考慮に入れない。

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